寝不足短歌。
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局番なしの

浅漬けのキムチ止まらぬ春の夜プロフィール文を考えながら

割引券は羽のごとしも クラシカルな誘いをうけて中ジョッキ置く

たたいてもけっても死なずぬばたまの夜の鉄路の西鉄電車

よわ虫のしるしは兆す むくむくと白いきのこに刃を降ろすとき

愛ならんわたしのために焼かれいる炎の中のアラビアータよ

カーテンは西の小窓にひっしりと 本当はきみがすきなんだ、と

だれもかれも忘れたでしょう往く春にフリーズドライの花は降りつつ

空転の風ほがらかに駈けてゆく局番なしのきみに会うまで


「かばん」2011年5月号
ひらく
重き房の揺れし数珠もて雪の朝 いのることは ひらくこと 

記者ハンドブック新版しろじろと「たんぱく質」の表記を引けば

しまむらの無き国道にひらきたりファッションセンターやまかわの春

県境の森くらぐらと道ゆかば錆びし看板〈大木切ります〉

ウェイターの盆傾きて光あふれ きょう世界中で割れる皿よ

記者ハンドブックひらけば白梅のほころぶごとき「くちづけ」の項

ゆうぐれに抜け殻なりし絆創膏 終に性別うしないて落つ

雪の日にひらく便箋 陽に透けるつらら数えていたかったこと



「かばん」2011年3月号
日経2010 4/3(本名)
あと三分でバスは来るなり冬の日を走れば髪はさんさんと鳴る
四つ辻
ツイッターで文の到着知らされて何を書いたか覚えていない

景品にもらったというカシミア風ティッシュを持て余して弟は

ひざかけは冬のにおいだ地下街で人を数えるバイトをしてる

歩車分離されまくってはさみどりの影ちらほらと見ゆる四つ辻

花の枝の背すじを持たんあなたにもソフトカバーの本であること

封緘の羽やわらかく鳩たちはわが胸に一羽ずつ増えゆく

うつ伏せの淡き夜明けにかなしみは六両編成で来たりぬ 各停

くつおとは薄暮の街を過ぎゆけりつめたい星を巡るキャラバン



「かばん」2011年2月号
日経2010 2/27(本名)
雪の朝 喪の身支度に妹は呟けり「真珠って冷たい」
日経2010 2/6(本名)
日曜日午後九時二十分戸締まりを終えたらしい百均の店員
スター・ゲートで会いましょう
うつ伏せの前髪透かし君の名をググりっぱなしの朝は来にけり

オレンジをむきオレンジにかじりつく誰を好きになってもかまわない

靴擦れで出社せる朝コピー機は紙が欲しいとひいひい泣けり

置き去りにされて汗ばむ 準急に天然水のペットボトルは

紅のコーヒーカップの残像に上司の回転椅子揺れのこり

月面のごとくしずもる液晶に下がりまくった口角を見ゆ

おじぎ草が木まで育って傍らで一緒にあやまれり 緑濃し

一日が形を成して眠るなりポニーテールのまま眠るなり

高校の友達がいる空港の案内所[インフォメーション] いつも会えない

ひさかたの雲のすきまにやわらかくアクアラインの途切れておりぬ

ほんとうに愛してくれたひとはいて遥けき萌黄色の封筒

もう少し飲みたかったよ 今夜から間違った欠け方をする月

しろじろと春雨のなか自販機のあかりに浮かぶ深きくちづけ

毎日は均等に来る さみどりのルーズリーフの穴を数えて

遠浅の海を歩いてゆくように マクモーニグルのやさしきまぶた

くちづけを更新せよと朝靄の中でひかりはささやくけれど

ネイリストに今日磨かれし指先でやってはならぬことのいくつか

奪うからキャップは固く締めておく光のなかに秋の目薬

特急の停車駅やや多すぎて枯れ葉に触るるごときメールを

雑踏に北風受けてふくらみぬピンクハウスを纏うふたりは

来なかったひとの名前をレジ横の〈空席待ち〉に書き足して去る

会えるはずだったから完璧な化粧落とせずにおりバスルーム冷えて

うすい鍵の銀色にぶく真夜中に思い出すこうもりの飼い方

ベスト盤ばかりの棚に迷い込みどの小節も鳴り出さぬ午後

みずいろのトリックアート 亡き人のお母さんから絵はがき届く

天国を説く青年はビル街を漕いでゆく雨合羽濡らして

夕暮れの製氷皿に流し込むパインジュースは星のかたちに

ローソンの店員のこえ揃いたり曲線はなめらかに未来へ

会いましょう 夜の運河は冷え冷えとスター・ゲートで待つという君



第22回歌壇賞応募作より一部改作

(ええと、がんばります!!)
空に銀杏
「信念をつらぬく」というタイトルの本逆さなり母の本棚

空に銀杏すとんすとんと伸びてゆきいろんなひとがかえってこない



「かばん」2011年1月号(名刺交換号)
2011年1月 かばん新春題詠歌会・お題「蟻地獄」
朝焼けのリタルダンドよ自動詞のごとく淋しきくちびるを寄す


(折り句もOKでした)
笹短歌ドットコム:お題「部活動」2010年12月
部活動対抗リレーを駆け抜ける剣道部員の袴の藍よ

学ランでソロ吹きしこと「どや顔」という言葉まだなかったころの