うつ伏せの前髪透かし君の名をググりっぱなしの朝は来にけり
オレンジをむきオレンジにかじりつく誰を好きになってもかまわない
靴擦れで出社せる朝コピー機は紙が欲しいとひいひい泣けり
置き去りにされて汗ばむ 準急に天然水のペットボトルは
紅のコーヒーカップの残像に上司の回転椅子揺れのこり
月面のごとくしずもる液晶に下がりまくった口角を見ゆ
おじぎ草が木まで育って傍らで一緒にあやまれり 緑濃し
一日が形を成して眠るなりポニーテールのまま眠るなり
高校の友達がいる空港の案内所[インフォメーション] いつも会えない
ひさかたの雲のすきまにやわらかくアクアラインの途切れておりぬ
ほんとうに愛してくれたひとはいて遥けき萌黄色の封筒
もう少し飲みたかったよ 今夜から間違った欠け方をする月
しろじろと春雨のなか自販機のあかりに浮かぶ深きくちづけ
毎日は均等に来る さみどりのルーズリーフの穴を数えて
遠浅の海を歩いてゆくように マクモーニグルのやさしきまぶた
くちづけを更新せよと朝靄の中でひかりはささやくけれど
ネイリストに今日磨かれし指先でやってはならぬことのいくつか
奪うからキャップは固く締めておく光のなかに秋の目薬
特急の停車駅やや多すぎて枯れ葉に触るるごときメールを
雑踏に北風受けてふくらみぬピンクハウスを纏うふたりは
来なかったひとの名前をレジ横の〈空席待ち〉に書き足して去る
会えるはずだったから完璧な化粧落とせずにおりバスルーム冷えて
うすい鍵の銀色にぶく真夜中に思い出すこうもりの飼い方
ベスト盤ばかりの棚に迷い込みどの小節も鳴り出さぬ午後
みずいろのトリックアート 亡き人のお母さんから絵はがき届く
天国を説く青年はビル街を漕いでゆく雨合羽濡らして
夕暮れの製氷皿に流し込むパインジュースは星のかたちに
ローソンの店員のこえ揃いたり曲線はなめらかに未来へ
会いましょう 夜の運河は冷え冷えとスター・ゲートで待つという君
第22回歌壇賞応募作より一部改作
(ええと、がんばります!!)